介護施設を見学するときは、建物の新しさより「本人の毎日の暮らし」と「困ったときの対応」を確かめる方が重要です。パンフレットだけでは分からない点を質問し、施設ごとの説明を同じ項目で記録することで、家族も本人も納得しやすくなります。
「見学したけれど、何を確認すればよいか分からなかった」という事態を避けるため、30の質問を6分野にまとめました。全部を一度に聞く必要はありません。本人にとって特に大切な項目から聞きましょう。
まず見学前に伝えるべきこと
見学の申し込み時に、本人の要介護度、移動能力、認知症による配慮の必要性、医療的ケアの有無、希望する入居時期を、分かる範囲で伝えます。受け入れ可能な状況かどうかは施設の条件や職員体制によるため、個別に相談が必要です。
見学当日、入居者の居室を無断で撮影したり、本人の同意なく他の入居者の様子を記録したりするのは避けましょう。施設の案内可能な範囲とプライバシーのルールを尊重します。
チェック1:職員体制と夜間の生活(5項目)
- 日中・夜間にどの職種が何人程度配置され、緊急時にはどう連絡するか。
- 夜間のトイレ介助、見守り、転倒時の対応はどのように行うか。
- 担当者が変わったとき、本人の生活上の注意点はどう引き継ぐか。
- 本人や家族から相談・苦情を受け付ける窓口はどこか。
- 職員の研修や事故防止の取り組みを、どのように説明してもらえるか。
職員配置の数値だけで「良い・悪い」を決められません。必要な支援が必要な時間帯に受けられるかを質問し、具体的な対応を確認しましょう。
チェック2:食事・入浴・暮らし方(5項目)
- 食事時間、食形態、アレルギーや嚥下に関する配慮に対応できるか。
- 食事を自分のペースで取れるか、必要な支援はどう行うか。
- 入浴の頻度、介助方法、体調不良時の対応はどうなるか。
- 起床・就寝・外出・面会・電話など、生活上の自由度はどうか。
- 趣味・宗教・習慣・身だしなみなど、本人が大切にしていることを続けられるか。
食事メニューやレクリエーション写真が魅力的でも、本人に合うとは限りません。「普段の一日」を具体的に説明してもらうとイメージしやすくなります。
チェック3:医療・認知症・体調変化(5項目)
- 協力医療機関はどこか、日常の受診と緊急時の対応はどう違うか。
- 看護職員の配置時間と、夜間の医療上の相談体制はどうなっているか。
- 服薬管理や通院付き添いは誰が、どこまで行うか。
- 認知症のある方の不安や生活上の困難にどう対応するか。
- 状態が重くなったとき、施設内で対応できる範囲と住み替えが必要となる条件は何か。
「医療連携あり」という言葉だけでは、24時間看護師が在籍するとは限りません。特定の医療行為や医療機関との連携については、本人に必要な対応ができるか確認しましょう。
チェック4:居室と環境(5項目)
- 居室の広さ、トイレ、収納、家具の持ち込みはどうなっているか。
- 車いすや歩行器での移動、浴室やトイレの使いやすさはどうか。
- 家族の面会、オンライン連絡、外出・外泊のルールはあるか。
- 災害時の避難体制や、家族への安否連絡はどう行うか。
- 本人の持ち物、衣類、貴重品、洗濯物はどのように管理するか。
見学時には段差や動線を見るだけでなく、本人が安心できる騒音・照明・におい・交流の程度も確認しましょう。設備の新しさだけが判断基準ではありません。
チェック5:お金と契約(5項目)
- 通常月の請求総額はいくらで、どの項目を含むか。
- 医療費、理美容、おむつ、日用品、送迎、通院付き添いなどの追加費用は何か。
- 入居一時金や前払金がある場合、返還・精算条件はどうなるか。
- 料金改定はどのような手続き・通知で行われるか。
- 入院・外泊・退去した場合、請求や契約はどう扱われるか。
見積書は口頭だけでなく、書面でもらいましょう。別契約の介護サービスがある場合は、その見込み費用も含めて考える必要があります。
チェック6:入居後と退居時(5項目)
- 入居後に本人・家族の希望を聞き、支援内容を見直す仕組みはあるか。
- 家族への近況報告の頻度や連絡方法はどうなっているか。
- 看取りに関する方針と、対応できる範囲は何か。
- 退居を求められる条件と、その際の相談・転居支援はあるか。
- 契約前に重要事項説明書や運営情報を持ち帰って確認できるか。
退居条件は、入居前に最も確認したい項目の一つです。入居時には対応できても、医療的ケアが増えると対応が難しくなる施設もあります。説明を受けたら、家族が理解できる言葉でメモしましょう。
見学後の比較表は「○×」より理由を書く
見学が終わったら、同じ日に「本人が良いと感じたこと」「希望と合わない点」「費用の未確認事項」「次回問い合わせること」を記録します。施設の説明が曖昧だった場合は、憶測で評価せず追加質問をしましょう。
公的な介護サービス情報公表システムでは、所在地・職員の状況・利用料・運営の取り組み等を確認できます。ただし公表情報と現在の入居可否や施設の対応範囲は必ずしも同じではありません。見学・書面・公的情報の3つを組み合わせると比較の精度が上がります。
よくある質問
Q. 施設には本人と一緒に見学へ行くべき?
本人の状態が許せば、本人の希望を直接確認できる機会になります。難しい場合も、本人の意向を事前に聞き、可能な方法で意思を確認することが大切です。
Q. 何施設くらい比較すべき?
正解の施設数はありません。急ぎの事情がなければ、候補ごとに同じ質問をして比較することが重要です。
Q. 職員数が多いほど質が高い?
一つの数値だけでは判断できません。職員の資格、勤務時間、対応の仕組み、本人に必要な支援との適合性を確認してください。
公的資料
厚生労働省:介護サービス情報公表制度の公表項目 / 特養の情報の読み解き方 / 介護サービス情報公表システムの検索方法
編集部注:見学時の質問を整理した一般向けガイドです。実在施設に対する評価や、職員・医療体制の事実認定ではありません。